<特別ルポルタージュ>実録「議員、介助員になる」

藤沢市議会議員 町田てるよし 市政レポート【Vol.10】

~学校現場から見えた〝支援〟のかたち~

 5月、私は教頭先生の案内で最初の教室へ入った。まだ不慣れな様子が漂う1年生のクラスだ。国語の授業中、児童たちはひらがなの「ひ」を学んでいた。
 教頭先生から介助を必要とする児童について教えてもらう。指定された児童の横につき、いつもより一段と低い机の高さに合わせてしゃがみ、軽く自己紹介をする。

 「町田といいます。今日はよろしく!」

 「うん」と割とそっけない返答。
 そんなやりとりを横目に先生の授業は進んでいく。ゆっくり丁寧に書かれた黒板の「ひ」を参考に児童たちは各自のドリルに練習をはじめた。その子は、先生が皆に指示したことが自分にも向けられていると理解することが難しい。
 その子の机の上には筆箱だけが置いてある。
 「まずは引き出しからドリルを取り出してみてください。」
 直接伝えてあげることが大切だ。 その子はドリルを取り出し、早速「ひ」をなぞり始めた。他の児童達は「見て、できた!」「どこまでやっていいの?」とめいめいに先生へと話しかける。 
 先生は教室を歩きながら児童一人ひとりの「ひ」をチェックしていく。
その子も矢継ぎ早に「ひ」を書き連ねていく。
「ひ」がマスの下半分に寄ってしまい、上手に書けていないみたいだった。
 「急いで書くと字が汚くなっちゃうよ。」
 少し乱雑に書かれた「ひ」をひとつ消しゴムで消して、一緒に「ひ」となぞった。
 「ありがとう」とそっけなく伝えてくれた。
 その子はどんどんとドリルを進めていく。ともすると授業よりも先に進んでしまいそうだったので一旦手を止めてもらった。
 すると納得のいかない「ひ」を、消しゴムで消しては書き直し始めた。
 勉強するの好きなんだね。熱心にやり直す姿を見て、介助の必要性とは側面的なんだなと思った。必要なところだけ手を差し伸べてあげる。それ以外は他の児童となんら変わりはない。私の中にあったひとつの色眼鏡がすっとクリアになった。

学校の抱える課題とは

 今回、K小学校の校長先生にお願いをして介助員の体験をさせていただく運びとなった。
 藤沢市の介助員報酬は時給900円。最低賃金1,162円や近隣市の報酬額と比べると低い金額である。有償ボランティアとして従事いただいているが、これでは将来の担い手不足が懸念される。
 また学校現場が抱える課題はこれだけではない。主には教員不足に起因するわけだが、例えば別室教室で児童を見守る学習支援員の拡充も必要である。様々な事情があってクラスに馴染めない児童に対する「学校内での居場所づくり」が不登校になることを防ぐ手段と思う。しかし学校によっては空き教室がなく、校長室がそういった場所に割り当てられてしまう実態もある。そうなると校長先生も業務の手が止まってしまう。なにより子どもにとって、学校が居心地の悪い場所となる。
 学校現場の課題を知るためには実際に自分自身が飛び込んでみなければ分からないだろう。今日は議員バッジを置いて、新米介助員として子ども達に学ばせてもらおう。

別室教室へ潜入

 1年生のクラスとはお別れをして、次は別室教室に案内してもらった。
 「そういえばこの部屋、自分が子どもの時は喧嘩をした時の仲裁部屋だったな。」
 そんなことを思い出しながら、別室教室にいる一人の児童を紹介していただいた。人当たりの良い児童で、すぐに打ち解けてくれた。一緒に国語のドリルを進めることにした。
 「夢があるから勉強を頑張りたい。」
 そう言って黙々と算数ドリルを解き始める。隣で様子を伺っていたが、どうしてクラスに馴染めないのか分からない。
 4ページほどドリルを進めたところで、おもむろに絵を描き始めた。絵を描くことが得意みたいで、私に向けて見せてくれた。どうやら私が手持ち無沙汰で居心地悪そうだったから気を利かせてくれたみたいだ。即興で作ったネコの絵をもらった。
 「ありがとう。大切にするね。」
 思いがけないプレゼントが嬉しかった。
 すると別の児童が芋虫の入った虫かごを片手に戻ってきた。外で学習支援員と採取してきたようである。その子は得意げにアゲハの幼虫を見せてくれた。落ち着いて虫の解説をするその子はとても大人びた印象があった。やはりなぜクラスに馴染めないのか分からない。
 その後は二人の児童による手品の披露があり、別室教室は賑やかとなった。
 あとになって校長先生から聞いた話だが、二人ともそれぞれの理由を持っていた。クラスにはなかなか行けないが、それでも学校には登校してくれている。家と学校。学校とクラス。彼ら彼女らには超えなきゃならない壁が二つあった。別々の理由だから、大人がそれぞれに向き合う必要がある。
 保護者と先生と学習支援員と、皆で協力しながら子どもの成長を見守る。別室教室の有無もそうだが、「居場所があれば、お金を出せば」そういった単純な話ではなく、なによりも人がそこにいなければ、彼ら彼女らの壁を取り除いてあげることは難しいだろう。
 いつか二人がクラスで友達と過ごす時間を楽しく思ってもらえるように、私も応援したいと思った。

みんな素直な子どもたち

 続いて2年生のクラスへ移った。ちょうど耳鼻科検診の時間であり、検診を終えた児童の様子をクラスで見ていてほしいとのことだった。
 先生が不在の教室で児童たちが羽を伸ばしすぎて他のクラスに迷惑をかけないようにと見守る。元気な子どもたちほど手強いものはない。
 思い思いの動きをして、教室の外に飛び出そうとする児童を制止する。
 「こんな大変なことを先生は毎日やっているのか。」先生に対する尊敬の念がこみ上げてきた。 
 児童全員が教室に揃い、国語の授業が再開する。介助を必要とする児童を紹介してもらい横につく。その子は直前に紙で蚊をつぶしたみたいで、執拗に見せてきた。どうやら授業に集中が向かないみたいだ。つぶされた蚊に対して何を言えばよいのか分からず、戸惑ってしまった。もし同じシチュエーションを経験したことがある方がいれば、答えを教えてください。
 この日の授業は、教科書の絵を見ながら児童同士が質問を出し合う。丁寧な言葉づかいで絵の様子を説明し、該当する絵を回答する。
 いざ児童同士がペアを組むことになると、その子はとても人気者だった。「一緒にやろう」と多数からオファーがあり、児童たちの輪の中心にいた。子ども同士ではその子の抱える困難は関係ないみたいである。必ずしも大人が手を差し伸べる必要はない。子ども同士で環境を作っている。やはり介助の必要生とは側面的であると感じた。
 もはや私は必要なくなったので、別の児童とペアを組み質問を出し合うことにした。ペアで
の作業が一巡すると、その子が私のもとへ来てくれた。私にも質問を出してくれるそうである。一緒に教科書を見ながら、絵を説明してくれた。
 確かに落ち着きはないかもしれないけれど、優しい子なんだな。
 最後に授業の感想を各自のノートに書くことになった。「まちだせんせいがやさしかった」と恥ずかしそうに書いてくれた。

ありがとうを伝えたい

 今回の介助員体験は気付きをたくさんもらった。ひとえに介助が必要だと言っても、実際には他の児童と一緒である。むしろ勉強が好きだったり、色々と話しかけてくれたり、私の気持ちを汲み取ってくれたり。どうなることかと身構えていた自分自身が恥ずかしい。
 しかしこれらは実際に体験してみないと分からなかっただろう。非常に貴重な体験をさせてもらい、改めて小学校に感謝を申し上げたい。

議員がやらねばならぬこと

 さて、今回得た気付きを議会で訴えることが私の仕事である。
 介助員のなり手を持続的なものにするために、待遇の改善は急務であろう。不登校対策としての別室教室と学習支援員の必要性も強く感じた。課業時間めいっぱいまで拡充をして、児童の居場所を作り、先生たちの負担を減らせるようにしたい。
 そしてもう一つ訴えるべきは、色眼鏡を外すことである。私自身も現場を見てみるまでは児童に対して先入観を持ってしまっていた。「発達の遅れ」「グレーゾーン」「特性のある子」なんて言葉が先に独り歩きしていないか。
 大人である私たちも苦手があって、それらを補い合って生活をしている。学校でも児童のすべてを補助する必要はなく、児童の苦手を補ってあげることが大切だと知った。そうやって苦手を克服して、成長していくんだと思う。
 保護者を始めとする市民の皆さまには、改めて学校の現状を知って寄り添ってもらいたい。地域の中で、児童を見守る目がたくさんあることが好ましいと思う。そして子ども達に向き合う時間を確保するためにも、先生方の苦労にも配慮をしてもらいたい。学校とは行政が運営す
るものではなく、保護者と地域と一体になって運営するものだと思った。

おわりに

 今回はルポルタージュ形式での活動報告を作成してみました。読みにくい文章だったかと思いますが、お読みいただき誠にありがとうございました。感想などございましたら、ぜひお待ちしております!
 そして今回携わらせていただいた児童についてはその日起きた出来事だけを書くようにし、詳細は触れないようにしました。ご理解をいただきますようお願いします。
 最後に、介助員体験を快く受け入れてくれたK小学校の校長先生を始めとする先生方にお礼を申し上げます。
 児童・生徒に学校をますます好きになってもらえるように、引き続きがんばって参ります。

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 多くの藤沢市民に、市政報告レポートを届けたく考えており、ポスティングボランティアを募集しております。

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